ゼロエミッションに向けた取り組み〜エネルギー効率の向上〜

エネルギー効率とは何か?

  • エネルギー効率の定義と重要性

エネルギー効率とは、エネルギーの入力量に対する出力量の比率のことです。例えば、発電所では、燃料から発電する際にどれだけのエネルギーが無駄にならずに電気に変換できるかを表します。エネルギー効率が高いほど、同じ量の燃料でより多くの電気をつくることができます。エネルギー効率を高めることは、以下のような理由で重要です。

エネルギーの安定供給

エネルギー効率が高いほど、同じ需要を満たすために必要なエネルギー源の量が減ります。これにより、エネルギー資源の枯渇や価格変動のリスクを低減することができます。

経済効率性

エネルギー効率が高いほど、同じサービスや製品を提供するために必要なエネルギーコストが減ります。これにより、企業や家庭の経済負担を軽減することができます。

環境への適合

エネルギー効率が高いほど、同じ活動を行う際に排出される温室効果ガスや大気汚染物質の量が減ります。これにより、気候変動や大気汚染などの環境問題への対策に貢献することができます。

  • エネルギー効率がゼロエミッション社会に与える影響

エネルギー需給構造の変化

エネルギー効率を高めることで、化石燃料などのCO2排出量の多いエネルギー源に依存する度合いを低下させることができます。また、再生可能エネルギーや水素・アンモニアなどの新しいエネルギー源を導入する際にも、需要量を抑制することでコストやインフラ整備の負担を軽減することができます。

エネルギーシステムの最適化

エネルギー効率を高めることで、電力需要と供給のバランスを改善することができます。また、スマートグリッドやVPPなどの技術を活用することで、消費者や地域が自ら発電した余剰電力を売買したり、需要調整したりすることができます。これにより、電力システム全体の効率性や安定性を向上させることができます。

エネルギーサービスの多様化

エネルギー効率を高めることで、電気自動車や燃料電池自動車などのゼロエミッション・ビークルの普及を促進することができます。また、エネルギー管理システムやホームエネルギー管理システムなどの技術を活用することで、消費者や家庭が自分たちのエネルギー使用状況を把握したり、省エネルギーに関するアドバイスを受けたりすることができます。これにより、エネルギーサービスの質や選択肢を向上させることができます。

エネルギー効率の向上のための技術革新

ゼロエミッションを達成するためには、エネルギーの供給面だけでなく、需要面でも取り組みが必要です。つまり、エネルギー効率を向上させて、エネルギーの消費量を減らすことが求められます。

エネルギー効率とは、一定の目的や機能を達成するために必要なエネルギー量の少なさを表す指標です。エネルギー効率が高いほど、同じサービスや製品を提供しながらも、CO2排出量や電気代などを削減することができます。

  • エネルギー効率を向上させるための新技術の紹介

エネルギー効率を向上させるためには、様々な分野で新しい技術やシステムが開発・導入されています。ここでは、その中から以下の4つの技術を紹介します。

揚水発電

電力需要が低い時に水を高い場所に貯めておき、電力需要が高い時に水を落として発電する技術です。再生可能エネルギーの出力変動に対応し、安定的な電力供給に貢献します。また、水力発電はCO2排出量が非常に少ないため、気候変動対策にも有効です。国際エネルギー機関(IEA)は、揚水発電を含む水力発電は今後も再生可能エネルギーとして世界最大の電力源であり続けると予測しています。

蓄電池

化学反応によって発生するエネルギーを電気に変換して貯蔵する技術です。再生可能エネルギーからの余剰電力を貯めておき、必要な時に供給できます。これにより、電力の需給バランスを調整し、エネルギーの有効活用ができます。また、蓄電池は災害時などにも非常に役立ちます。例えば、2021年1月に稼働を開始した世界最大のグリッドスケール蓄電システムである米国カリフォルニア州のモス・ランディング・エネルギー貯蔵施設は、300メガワットのリチウムイオン電池を備えており、約22万5000世帯分の電力を供給できます。

熱エネルギー貯蔵

建物や工業施設で発生する廃熱や再生可能エネルギー源からの余剰熱を貯蔵して冷暖房や発電に再利用する技術です。水や砂や岩などの物質や、化学反応や化学変化を利用して熱エネルギーを貯蔵できます。熱エネルギー貯蔵は、エネルギーの損失を減らし、エネルギー効率を向上させるだけでなく、CO2排出量も削減できます。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2019年に234ギガワット時(GWh)だった熱エネルギー貯蔵の設備容量は2030年には800GWhを超え、世界の市場規模が3倍になる可能性があることを示しています。

機械的エネルギー貯蔵

物質の動きや重力を利用してエネルギーを貯蔵する技術です。例えば、円盤を回転させてエネルギーを蓄えておき、必要な時に電力として取り出す「フライホール技術」がこれに該当します。フライホール技術は、高速で回転する円盤が持つ運動エネルギーを利用しています。この技術は、電力系統から切り離された場合でも安定した電力供給が可能であり、再生可能エネルギーとの相性も良いとされています。

  • スマートテクノロジー、IoT、AIの役割

エネルギー効率を向上させるためには、新しい技術やシステムだけではなく、それらを高度に制御・最適化するための情報技術も重要です。ここでは、その中から以下の3つの技術を紹介します。

スマートテクノロジー

エネルギー効率の向上には、スマートテクノロジー、IoT、AIといったデジタル技術も欠かせません。スマートテクノロジーは、センサーや通信機能を備えたデバイスやシステムで、周囲の環境や利用者の状況に応じて自動的に最適な動作を行うことができる技術です。IoTは、インターネットに接続されたさまざまなものが相互に情報をやり取りすることで、新たな価値やサービスを生み出す仕組みです。AIは、人間の知能や判断力を模倣したコンピューターシステムやアルゴリズムで、大量のデータから学習したり、複雑な問題を解決したりすることができる技術です。

スマートテクノロジー、IoT、AIは、それぞれ単体でもエネルギー効率の向上に貢献できますが、組み合わせて利用することで、さらなる効果が期待できます。例えば、スマートテクノロジーとIoTにより、建物や工場内のエネルギー使用量や生産情報などをリアルタイムに見える化し、AIにより最適化計算や予測分析を行うことで、エネルギーの供給と需要のバランスを調整したり、エネルギーコストを削減したりすることができます。 また、スマートテクノロジー、IoT、AIは、エネルギー効率の向上だけでなく、エネルギーの創出や利用にも革新をもたらします。例えば、人工光合成は、太陽エネルギーとCO2を使って化学品を合成する技術で、AIや光触媒などの先端技術を活用しています。カーボンリサイクルは、CO2を分離・回収し、コンクリートや化学品、燃料などの原料として再利用する技術で、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術を活用しています。


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